研究目的
東アジア社会では少子高齢化が急速に進み、日常生活の維持も困難な地域も出現する事態になっている。そのような東アジアの縮減する社会機能の維持を近年は東南アジアからを中心に働き手を確保することで行っている。このような現状について①情報通信技術等のテクノロジーの発展や頻繁な越境によって、家族などの親密圏のあり方やネーションの想像が如何に影響をうけ、新たに構築されているのか、②統合や共生という概念の再検討や乗り越えを目的に、国家からみた移民政策による縮減する社会への対応と、個人(階層やジェンダー等の違いに着目し)から見た移動動機や移住先社会との交渉過程が如何に連動し、乖離しているのかを検討していく。これらの検討から縮減する社会における/関与する人々の尊厳ある生が如何に可能かを模索する。
(1)「日本を選ぶ(残る)理由 日本を選ばない(去る)理由」
移住・移民先としての日本(しかも避けられる傾向にある)を各国や在日外国人から見ることで人口減社会にとっての外国籍市民の受入と個人の移動との乖離や矛盾などを議論する。
(2)「日常としての移動から見えるネーションの想像」
移動が日常化する社会おいて民族や家族、国家のあり方が定住を前提とするそれらのあり方からどのように変容し、または変わらないのかを議論するとともに、移民を受け入れる国家と受け入れない国家との国家の想像の違いを検討する。
(3)「統合か共生か」
少子高齢化における労働者不足に対応する形で展開する東アジアの「共生」モデルと移民の受入を積極的に行い、現在その揺り戻しもあるヨーロッパの「統合」モデルの理論的検討を行う。
(4)「難民/移民/出稼ぎ ベトナムを起点とするグローバルな移動の展開」
多様な移動の姿を見せるベトナム人を事例に上記キーワードを個別具体的に検討する。
主催事業
2023年11月26日に「人口減社会における越境・家族・国家」シンポジウム「日本を選ぶ(残る)理由 日本を選ばない(去る)理由」をテーマに神戸大学にて実施した。プログラムは以下のとおり。
(1)趣旨説明 上水流久彦(県立広島大学)
(2)基調講演 是川夕(国立社会保障・人口問題研究所)
日本における移民受入れ、及び社会統合の現状について
(3)個別事例発表
①野上恵美(武庫川女子大学)
日本定住を指向する在日ベトナム人のエスノグラフィー
②落合知子(摂南大学)
外国人市民によるトランスナショナルな教育及びキャリアの構築についての試論
③梶村美紀(国立民族学博物館)
ビルマ/ミャンマー人の場合―本国情勢との関連で
④横田祥子(滋賀県立大学) 16時30分~16時50分
社会統合から「東南アジア人材」育成まで:台湾の「新住民」政策を事例として
(4)総合討論 17時~18時 コメント各10分・討論40分
コメント 今村真央(山形大学) 岡田浩樹(神戸大学)
共催事業
(1)実施済み
①公開シンポジウム「縮減する社会における家族・親族研究と文化人類学―いかようにもありうる生の尊厳に向けて」
主催 日本文化人類学会
日時 2023年12月16日
場所 東北大学川内南キャンパス
(2)実施予定
①シンポジウム「東アジアの祖先祭祀を問い直す―少子化、父系理念、家族を超える試みから」
主催 「少子化に揺れる東アジアの父系理念-祖先祭祀実践と世界観の再創造に関する比較研究」(JSPS科研費18H03607)
日時 2024年1月27日
場所 東京大学本郷キャンパス
詳細 https://ees-kobe.com/topics/294/
②シンポジウム「「中山間地域の多文化共生の今後」
主催 県立広島大学多文化共生社会研究センター
日時 2024年3月3日
場所 せら文化センターパストラルホール(広島県世羅町)
メンバー
上水流久彦(コーディネーター)
野上恵美
今村真央
落合知子